アラサー女とダイエット①

いつからだろうか。

ご飯が“きちんと”食べられなくなった。

 

思い返すとダイエットを始めたのは2021年の秋だった。

きっかけは、SNSだとか他撮りが盛れないとか友達には言ってきたような気がするが、前回も書いた会社の大好きな人だった、A先輩との出来事だったと思う。

 

会社の帰り道、更衣室から私服を着て出る私。

この時の服装を今でもよく覚えている。

黒の七分袖のリブTシャツに、ブラウンのユニクロジーパンだった。

Tシャツはぴちっとしていて、体型がよく現れた。

 

その時同時に、経理部のギャルも更衣室から出てきた。

 

そのギャルは帰国子女で、とにかく派手で目立っていた。一部上場のメーカーの経理部とは思えない、金髪ロングのへそ出しで出社していた。

 

そしてそのキャラを裏切らず、課長から新入社員まで、女性慣れしていない工場勤務の男性の心鷲掴みにするような、誰の懐にも入り込んでいける明るい性格だった。

 

正直私は大嫌いだったし、苦手だった。

 

同じ職場にそんなギャルがいることを想像してほしい。課長部長関係なく全員にタメ語だし、

その子が自部署に来るたびにちやほやされて、その度に何もされていないのに本当に嫌な気分になっていた。

そのギャルは私の負のオーラに気づいていて、ギャルが異動になるまで私には一切話しかけてこなかった。

そりゃそうだ。勝手に嫌悪感を抱いていたのは私だ。

 

話は飛んだが、そのギャルと同時に更衣室を出たら、

隣の男子更衣室からA先輩もでてきた。

 

 

その瞬間。

 

A先輩とギャルと私が同タイミングで鉢合わせた。

一緒にかーーえーーろーーーーー!!とギャルがA先輩に言う。

仕方ないな、と言わんばかりの顔のA先輩。

一人立ち尽くすあたし。その場にいるしかなかった。

 

完ぺきな敗北を目の前でした。二人が並んで帰る後ろを、かなり後ろから距離を離して歩いていくしかなかった。

 

ギャルは寮まで乗せてってよー!!とか言うし。声でけえよ。

A先輩は駐車場までね?と。乗せてくんかい!!!!

後ろをのそのそと情けなく歩く私に2人の姿が突き刺さった。

 

 

状況を受け入れられなくて、やっと入り込んだ自分の車の中で

そうだよね、そうだよね、私なんかね、、、と唱え続けた。

羨ましい。あの軽快さ。あの私にはない愛嬌が。

ギャルがあの瞬間いなければ、あたし一緒に帰れたのにな。。

いろんな事を思って悔しさと惨めさ、悲しさを噛み締めていた。

泣きたかったが、そういうときほど涙は出ないものだ。お前じゃないと、負けだと言葉で言われない"負け"が1番惨めなのだ。

 

あたしがもっと可愛ければな

あの子に勝てる何か、があればな

認められるのかな……

負けを全然受け入れなかった。受け入れたくなかった。

受け入れないかわりに、何かを頑張ることで埋めるように

 

“痩せれば認められるかも”

“この辛さや苦しさは、痩せれば変わる”

“痩せれば全部うまくいくかも”

 

 

 

そんな思考がだんだん、自分を支配して大きくなった。

 

 

 

そこから糖質制限、運動、今思えばかなりストイックにこなしたと思う。

 

体重はだんだん落ち、1年で13kg落ちた。

 

周りからは“痩せてきれいになった”“ダイエットがんばったね”

 

望んでいた言葉を言ってもらう事で、認められる快感を得た。

 

 

 

そうなるともう、体重を落とすことでしか認められない、という思考に陥った。

 

いつからか、食べることが悪になった。

 

全部のカロリーを見て、食品表示をみて、炭水化物、脂質の表示を見ないと買えない。

 

0カロリーのもの以外は受け付けない。

 

 

 

そんな中、会社の飲み会があった。

 

食べなければいけない用事は苦痛だった。でも拒食症がばれるのはもっと嫌だった。

 

1度口に食べ物を運んだら電気が走ったようだった。とてもおいしかったのだ。

 

その帰り、コンビニで大量に食品を購入して、貪るように過食をした。

 

食べ終わった後、罪悪感と努力が無駄になった後悔で泣きながら、ネットで 過食嘔吐 で検索した。

 

 

 

地獄は始まったばかりだった。